色彩検定では、2018年12月に色彩の新しい分野の検定がスタートしました。それがUC級です。

UC級って何?どんな勉強をするの?と思っている人もいると思いますので、ここでは、UC級とは何か、またどのような勉強し、その勉強をすると何ができるようになるのか?ということをまとめていきたいと思います。

UC級とは

ユニバーサルデザインとは

ユニバーサルデザイン(UD)という言葉を聞いたことがありますか? これは、元のデザインに対して改造や特別な設計を必要とせず、年齢や、性別、能力、状況の違いに関わらず、最初からすべての人々にとって利用しやすく設計されたデザインのことを示します。

最近の公衆トイレなどでもよく見るセンサー式の蛇口は誰にとっても便利で、まさにユニバーサルデザインの代表的なものですね♪
バリアフリーとは

バリアフリーとは、障害者や高齢者の社会参加を困難にする障壁をできるだけ取り除こうとする考え方。こちらは現存する設備や製品などについて、障壁となる点を取り除いたり、あるいは専用の機能を付加するデザインを指します。

ユニバーサルデザインとバリアフリーとの違い

この2つ、似たような働きかけのような感じがするかもしれませんが、バリアフリーは障害がある(または高齢者であるなど)という選別があって、そういうバリアがあると感じる人達が障壁が無いようにデザインする、というものですが、ユニバーサルデザインは最初から障害がある人だけではなく国籍・年齢・性別を問わず、「あらゆる人にとってどのような状況でも快適に使える」ということが求められているものなので、根本的に考え方が違うものになります。

UCについて

色は様々な情報を私たちにもたらしてくれます。そしてその中には緊急性が高いものや危険を知らせるもの、それこそ私たちの命に関わる情報の場合もあります

しかし、すべての人がフルカラーの状況で色が見えるとは限りません。それは、先天的にある特定の色が見えづらい人もいますし、またそれは、特定の人の話というだけではなく、私たち人間は誰しもが加齢により、目の老化から確実に色の見え方は確実に変わります。

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このような色の見え方の多様性を知り、すべての人にとってわかりやすい視覚情報とは何かを学ぶのがUC級になります。

UC級で勉強すること

色を見るために必要なものとは?

色の勉強をすると、まず「そもそも色ってどうしてみえるの?」という勉強をします。

まず色を認識するにはが必要です。(真っ暗闇では、色は分からないですよね)

そして、「○○の色」というための対象物が必要です。「リンゴの赤」など、私たちは特定のモノをみて、そのモノの色と認識します。

赤いリンゴなど、私たちは特定のモノをみてそのものの色を認識します。

そして、光と物体があっても当然、私たちのが開いていなければ色は分かりません!

目をつぶってしまえば、当然、色はわかりません。

ということで、色の勉強をすると最初によくこんな絵を見ることになります。

そのため、色彩検定では初級の3級から1級まで、光と物体と眼についてを深堀することになります。

なぜなら、この3つの要素の状況が変わると簡単に色の見え方が変わるので、3つの状況を理解していないと、色について携わるとき、見せたい色がきれいな状態(見せたい色の状態)で見せられないという悲劇が起こるからです。

例えば、光は白熱灯の黄みの光で見た時と蛍光灯の青みの光で見たときとでは当然、同じものを見ても色が違って見えます。

白熱灯は黄みの光です♪
蛍光灯は青みの光です♪

また同じ色でも素材によって見え方や人の感じ方が変わります

マットな素材の青なので優しい印象になりますね♪
つやのある鮮やかな色なので華やかな印象になります♪

このように、人が色と認識するには、私たちの目に光が入り、それが私たちの脳に電気信号として伝わることで色が見えるという仕組み、これを理解することがとても大切になります。

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逆にいうと脳に電気信号として伝達するまでの間に何かトラブルがあれば、色として認識できないわけです!

人間の目について

このように私たちの眼は、光を取り入れる外界の状況を知るための器官なので、どのような構造をしているかを知ることが大切になります。そのため色彩検定でも、またUC級でも勉強することになります。

網膜にある視細胞が大切!

眼の構造としては、人間の目の中の網膜という膜に、カメラでいうところのカラーフィルムモノクロフィルムにあたる、大きくいうと2種類の視細胞があります。

ちなみにカラーフィルムを錐体(すいたい)モノクロフィルムを杆体(かんたい)といいます。

色をとらえる細胞と明るさ暗さだけをとらえる細胞は違う細胞なんですね…♪

網膜にはもちろん様々な細胞がありますが、色を見るために特に重要なのがこの視細胞や網膜色素上皮細胞などで、これらの細胞の働きが光の刺激を電気信号に変換するときの重要な役割を果たしています。

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特に色みを感じる視細胞の錐体細胞について理解することが特にUC級ではとーっても大切です

あなたが見えている色は誰もが同じように見えているわけではない。

「目を開ければフルカラーの世界が広がる」それは誰に対しても当たり前に起こっていることではありません。

人間の生まれつきの色の感じ方を色覚(しきかく)といいます。そして人間の網膜にあるカラーフィルムにあたる錐体は3種類があります。

  • 赤を感じるL錐体 
  • 緑を感じるM錐体
  • 青を感じるS錐体

私たちは、この赤の光緑の光青の光混ざることで、様々な色を脳に映し出すことが出来る仕組みになっています。

テレビやパソコンのモニタを拡大してみると、赤(R)緑(G)青(B)の小さな点が並んでいるのがわかります。カラーテレビの発色原理はこれら赤(R)緑(G)青(B)の小さな色点の明るさによってさまざまな色を再現していますが、それと同じようなことが私たちの脳の中で行われます。

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カメラやテレビの色再現は、私たち人間の色の見え方がわかることで作られるようになったものなんですよ!

3種類の錐体の機能により色覚が決まる

この3種類の錐体が正常に働くことで、フルカラーで物の色を見ることが出来ます。

しかし、この3種類の錐体の内、どれかが機能しないか、機能しづらいことで見えづらい色みが変わります。そしてその原因は先天的に色が見えづらい場合と、事故などによって後天的に見えづらくなる場合があります。後天的の場合、眼や脳の病気や頭部の怪我によっておこりますし、心因性のストレスなどでも見えづらくなる場合があります。また目の老化によって色の見え方は変化します。

先天的に色が見えづらい人

赤を感じるL錐体が機能しない(またはしづらい)場合、赤の色みが感じない(または感じづらい)状況で、このタイプを1型色覚といいます。

緑を感じるM錐体が機能しない(またはしづらい)場合、緑の色みが感じない(または感じづらい)状況で、このタイプを2型色覚といいます。

青を感じるS錐体が機能しない(またはしづらい)場合、青の色みが感じない(または感じづらい)状況で、このタイプを3型色覚といいます。

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特に特に赤と緑の区別がつきづらい人が多く、2型タイプは全体の3.5%、1型タイプは全体の1.5%といわれています

なお、3種類の錐体が正常に機能している人は3色覚者といいます。

男性に多い理由

先天的に色覚異常を有しているのは、特に男性に多く、これは性染色体に色覚の遺伝子があるためです。

男性はXY、女性はXXで、色覚の遺伝子はXにあり女性はX染色体が2つあるので、どちらかに異常があってももう一つで補えますが、男性の場合X染色体が1つしかないので、どうしても男性の方が出現しやすいということです。

そして日本人では男性の約20人に1人、女性で500人に1人の割合といわれていて、日本全体では320万人以上いるとされています。

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20人に1人という割合は、実に血液型のAB型の出現率と同じといわれています。それだけ実は身近な話なんですね…。

そして色の見え方はこれだけ違います。

左は3色覚者の見え方ですが、右は1型2色覚者(2色覚は2つの錐体しか動いていない意味です。)の見え方です。赤と緑の色みが見えていない状態ですね。

*左上が一般的な見え方ですが

例えば、赤色が見えづらい人だと、焼肉などで焼けているところと焼けていないところの違いが判らないということになります。

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色覚についてはデリケートな問題なので、一時期色覚検査が行われていませんでしたが、就職に関わることもあり、現在では任意で検査を受けられるようになりました。

色による配慮とは

色覚異常、とか、色弱と聞くと皆さんはどのようなイメージがありますか?

実際、私の講義などでもよく話があるのが、「全く色が見えていない人」と思ってしまう人も中にはいます。

しかしそういうタイプの方は全盲(極めてまれな1色覚者)ということで、多くの場合、すべての色が見えない、というわけではないのです

ただ、写真で確認したように見えない(もしくは見えづらい)特定の色があるということなのですが、どうしても色の区別がしづらいということが多くなるので、例えば緊急性を知らせるようなものの場合は、配慮する必要が絶対にあるんです。

背景が黒、白で、使う文字の色で読みやすい、読みにくい、という文字の色はこのように比較するとよくわかりますね。

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黒が背景の場合黄色の文字だと読みやすいですね。しかし、黄色は背景が白だと読みづらくなります。なので、黄色が読みやすいというのではなく、背景と文字の色をどのように組み合わせるかが大切なポイントです。

背景の色が有彩色の場合でも、同じように文字の色が見えやすい組み合わせと見えづらい組み合わせがあるので配慮が必要になります。

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ホームページの画面でもたまに読みにくいな…と思うものがあります。とても良いことが書いてあっても読みづらいと「読もう」となかなか思いづらいもの。そんな時、背景の色と文字の色考えてみると良いですね。

そう、、正常に見える人にとって、「見えづらいと感じる」色の組み合わせの場合、色弱の人はまず見えません。

あなたの色の見え方は老化によって確実に変わる

色の見え方の変化は何も先天的に見えづらいという人だけのものではなく確実にあなたにも訪れます。

それは目の老化によって見え方が変わるということです。

人間の器官で一番早く老化が始まるのは目といわれています。日本国内の白内障の総患者数は94万人を超えていて、65歳以上の方が約90%を占め70歳以上になるとほぼ100%といわれています。

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白内障の原因の多くは紫外線といわれています。だから少しでも遅らせるためにはUVカットされているサングラスをつけることがとても大切なんですよ

また、老化による水晶体の黄変というものが老化にあり下記の様に見え方が違います。

そしてこの場合、下記の案内板はこう見えます。

上段は一般的な見え方で下は黄変した目で見た見え方です。黒を背景にした青の人型は全く見えません

こうしてみると、もし、黒を背景にした青の人型のトイレの案内だとおじいちゃん、案内がわからなくてトイレを探し回ることになります。

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背景をグレーにすると青の人型は分かりますね!

つまり、高齢者は若い人とは色の見え方が100%違っているので、色の組み合わせ方のせいで実は見えていない、という可能性がかなりあるのが現状なんです。

UC(ユニバーサルカラー)を意識しよう!

このように、先天的に色の区別がしづらい人も実は思っている以上に多いですし、また誰もが遅かれ早かれ老化によって自分の若いころと比べて100%色は見えづらくなります。

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ただし、昨日見えていたのに今日急に見えなくなる、というのではなく徐々に悪くなるので、本人はあまり自覚していない場合が多いです

特に最近のパソコンや携帯電話の普及による目の酷使は、人の歴史において、いまだかつてないことなので…どれだけ老化が早まっているか、…考えると恐ろしいことですね。

そのため、何か表現する人、また緊急性を知らせることをしたいという人、または何か案内をしたいという人、ぜひいろいろな見え方の人がいること(色の見え方の多様性)を意識していただくことがとても大切だと思います。

そして、正常に見える人も、将来もずっと同じような色で見えているわけではないことを考えると、誰にとっても見やすいように工夫ことが何よりも大切です。

現在は多様性の時代、またSDGsといわれて持続可能な社会を目指すといっていますが、その言葉だけでは、抽象的過ぎて自分にとっては遠いもの何となく他人事のように感じてしまうかもしれませんが、色や文字の見え方についての変化は身体が老化するすべての人に関わる問題です。

そのため、具体的にどうすればよいかを自分のこととして意識したり、考えることがまずはとても大切だと思います。

そして具体的にどうすればよいかを学べるのがUC級です

  • 色が見えるとはどういうことか
  • 色を見える器官、眼の構造や視細胞にはどのようなものがあるのか
  • なぜ先天的に色が見えづらいということが起こるのかまた、どのような色が見えづらいのか
  • 眼の老化とはどのようなことか
  • 見えやすくするためには具体的にどのような配慮が必要か

これらを勉強することで、色の多様性ということを考え、多くの人にとって見やすいようにするにはどうすればよいかを学ぶことが出来ます。

そう、色が見えづらい、ということは決して他人事ではなく、早いか遅いかのちがいで誰しもが体験すること。だからこそ、色の見え方が、どのように変化していくかを知っておくこともたいせつですよね!

このように海をおじいちゃんとお孫さんとみていても二人の海の色の見え方は違うんです。

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高齢者の方と同居されている人は、眼の老化について理解しておくことで、家庭内事故などを防ぐ工夫ができるようになりますよ

本屋さんを見たのですが、大きな本屋さんしかなかなかないのが現状のようなので、ネットで手に入れると良いですよ!

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また、UC級のテキストには、色を見る仕組みや、色の表し方などものっていますが、もし初めて色を勉強する人の場合、もう少し詳しく知りたい!という場合もあると思いますので、色彩検定の3級の内容も合わせて確認しておくと、より理解がしやすくなるのでお勧めです。

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いかがでしたでしょうか?自分が見えている世界は、誰もが同じように見えている、とつい思ってしまいがちですが、実は様々な色の見え方の人がいる、ということをまずは知ることが一番大切ですね。

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知らない、というのが一番怖いことだと思います。(知らないとどうしてよいかがわからないですもんね)正しい知識を得て、その上で正しく対応する、これが多様性を理解するために必要なことだと思います。