7月を代表する行事に七夕がありますね。
七夕といえば「天の川」。「天の川」にまつわるお花「ユリ」についてみていきましょう。
7月の誕生花 ユリ
ユリは7月の誕生花でもあるんですよね。初夏になるとユリを綺麗に活けるのが楽しみになります。
*ユリについては大きく活け、その姿かたちを愛でるとユリそのものを楽しむことが出来ます。
また、大輪の花を見るのもよいですがユリはつぼみも綺麗ですね。
そしてユリの香りはとても優雅な気持ちにさせてくれます。
そんなユリは古くから色々な伝説やその形の美しさから文様に使われました。
最高位の女神を表すユリ
ユリはローマ神話の最高位の女神ユーノー(ギリシャ神話ではヘラ)を象徴する花です。
ユーノーが寝ている時に、赤ちゃんだったヘラクレスにお乳を与えて、滴り落ちた母乳が天の川(Milky Way)になり
そこから地上に滴ったところからユリが生えたという逸話があります。
また、女神ユーノーは、夫のユピテルの力を借りず軍神マルスを身ごもったため、聖処女としてのイメージがあります。
聖母マリアを表すユリ
聖処女ユーノーのイメージからキリスト教では聖母マリア様を表す花にもなります。
*受胎告知の絵では天使ガブリエルは必ずユリを携えています。
また、ユリは泥水の中から凛として立ち上がり、汚れに染まらない清らかな花を咲かせるため白さ、純潔さをあらわします。
男性のシンボルとしてのユリ
穢れのない聖女のイメージがある一方、ユリはその筒状の花の形から男性のシンボルともされています。
フランス王のユリの紋章「フルール・ド・リス」は男らしさ、権力の象徴とされてます。
その形は3弁の花の形をとっていますが、中央の花弁は剣の様にまっすぐ立っていて、モチーフとすると凛々しい感じになります。
ユリの文様の歴史
このようなユリの花の文様がヨーロッパに入ってきたのは中世といわれています。
伝説によるとフランク王クローヴィスが、496年に三百人の家臣とともにキリスト教に改宗したとき、聖母マリアがユリを与えた、
という伝説があるそうです。
全体で十字が示されており剣と十字で「キリスト教のために戦う王」を意味しています。
そして、ユリの文様はフランスのルイ王朝の華麗な文化の中で咲き続け、ヴェルサイユ宮殿を飾ってきました。
やがてフランスではフランス革命が起き、ルイ16世が処刑されたのちは
フランス国王の象徴となる「フルール・ド・リス」は急激にフランスでは使われなくなってしまいます。
その理由はフランスで「フルール・ド・リス」の文様を使うと、王党派と間違えられるから!
当時は王党派狩りが激しく、身を危険にさらすような紋章は当然使わなくなったんですね…。
しかし、そのフランス革命は、それまでフランスの宮廷で働いていたコックや庭師、陶工、衣裳デザイナーを、ヨーロッパ各地に
亡命させることになります。
その結果、イギリスにもフランス料理やフランスファッションが伝わることになります。
イギリス ヴィクトリア王朝のユリの文様
その当時のイギリスはヴィクトリア王朝の時代。
ヴィクトリア王朝は、「ヴィクトリア二ズム」という言葉があるように、勤勉、禁欲、節制、貞淑などを特徴とする価値観や道徳観が強い時代。
19世紀に成長著しかった中流階級の理想を反映しピューリタニズムが強く現れたという時代、
聖母マリアとユリ、という取り合わせがヴィクトリア朝の重要なモチーフになります。
特にイギリスのこの時代は、女性の処女性を尊んだ文化なので、このユリのモチーフはあらゆる場面で使用されることになります。
こうしてパターン化され様式化されたユリの紋章は様々な装飾の場面で使われていきます。
ちなみにパターンとは原型・模範・図案・文様などに訳されますが、その語源は「ファーザー(父)」と同じだそうです。
つまり、パターンはものの形のパパ(お父さん)ということだそうです。
*パトロンも同じ語源で保護者であり、父親という意味合いだそうです。
そういう意味で、ユリのパターン化された文様は、「権威付けや守護する」という意味を美しい形で表しているといえそうですね。
またイギリスのヴィクトリア時代といえば、産業革命により、イギリスの経済が目覚ましく発展した、イギリス帝国の絶頂期。
しかしその産業革命による機械化で、粗悪品が世にあふれたため、それを嫌ったウイリアムモリスらを中心とした、モダンスタイルの
入り口となるアーツアンドクラフト運動やアールヌーボーの作家などがデザインの世界をけん引していきます。
特にユリを含めたさまざまなお花や植物などの文様は アーツアンドクラフト運動やアール・ヌーボーの作家の作品のデザインのモチーフになります。
*ミュシャの絵は好きな人が多いですよね!
まとめ
いかがでしたか?
このように両性のイメージがあるユリですがその凛としたイメージから気高さや格調が高い印象を与えるというのは共通していますね。
実際、様々なファッション小物や洋服のデザインなどでユリの文様があしらわれたものが沢山ありますが、
フランスやイギリスなどの王室にゆかりがある紋章と知って使うと、また愛着もわきますね。