6月といえば、やはり紫陽花ですよね!
紫陽花の起源について
今でこそ日本人に愛され、知名度も高い紫陽花ですが、実は不思議な歴史を辿っている花なのです。
日本に古くから存在する品種で、奈良時代から記録があるお花にも関わらず、花としての人気がほとんどない時代が続いたようです。
今のように広く人気が出るようになったのは、なんと第二次世界大戦後。
「梅雨といえば紫陽花」と鎌倉の紫陽花寺で有名な明月院は6月になるとみんな、紫陽花を見るのを楽しみにしているので
今の感覚からすると、戦前は大して人気がなかったなんて、ちょっとびっくりですよね!
紫陽花はアジサイ科アジサイ属の植物。原産は、日本に自生しているガクアジサイです。
海岸沿いで自生することから「ハマアジサイ」とも呼ばれます。またヨーロッパでもガクアジサイを元に品種改良が行われています。
ヨーロッパで作られた紫陽花をセイヨウアジサイといい、日本に逆輸入されてさらに改良されています。
紫陽花の漢字の由来とは
紫陽花の漢字の由来は平安時代中期の歌人・学者である源順(みなもとの したごう)とのこと。
源順は、中国の白楽天の詩に登場する「紫陽花」の特徴から、ガクアジサイを同じ花と考え、この漢字を当てたようですが、
しかし紫陽花は日本原産ですからこれは誤りで、白楽天が詩に詠んだ花とは違うようです。
現代でも外国の文化とミックスするときって最初はこういう勘違いからスタートすることが多いですよね。
古来日本ではあまり人気がなかった紫陽花
日本において紫陽花が書物に登場したのは『万葉集』が最初です。万葉集は奈良時代に作られた最古の詩集。
多くの草花が詠まれています。紫陽花も詠まれていますが、実は数はわずか2首しかないようです。
この2首の中で、紫陽花は「味狭藍」「安治佐為」と記述されています。
「言問はぬ 木すら味狭藍 諸弟(もろと)らが 練の村戸(むらと)に あざむかえけり」
【現代語訳】
物言わぬ木でさえ、紫陽花のように移り変わりやすい。諸弟らの巧みな言葉に、私は騙されてしまった
色を変えながら枯れていく紫陽花の様を、ころころと言葉や態度を変える人に例えています。
当時から色の変わりやすい花という認識があり、そうしたところが不人気だったようです。
「安治佐為の 八重咲く如く やつ代にを いませわが背子 見つつ思はむ(しのはむ)」
【現代語訳】
紫陽花のように群がって咲く花のように、いつまでも健やかにおいでください。この花を見るたびにあなたを想います。
万葉集にはこの2首しか入っていないことをみると、奈良時代はあまり人気があった花ではないようです。
ヨーロッパに渡り人気が出た日本の紫陽花
さて、そんな不遇な時代が続いた紫陽花ですが、日本原種の「ガクアジサイ」は江戸時代にヨーロッパに渡り発展します。
18世紀にヨーロッパへ渡った紫陽花は各地で品種改良が進んでイギリス王立植物園にも植えられるなどむしろ海外で珍しがられました。
シーボルトと紫陽花
フランスで人気の紫陽花
とくにここ十数年来、パリの紫陽花は進化し続けているそうで一輪でもボリュームがあるので他の花に比べてもとても目立ち
また、さまざまなかたちの花びらと色のバリエーションが驚くほど豊富。
よくパリスタイルのブーケで「パリの紫陽花」という表現をしますが、実は正確ではないそうです。
それは、品種改良はオランダでほとんどが行われているからだとか…
(*西洋の人が改良するとこんなにアンティークな雰囲気の花に変わります。)
しかし、パリのフルリストの手にかかり一つのブーケになると、素晴らしいハーモニーが生まれ、まるで絵画のようなブーケができあがります…
西洋紫陽花は石の花器に入れると雰囲気が出てすてきです!
また、紫陽花を1本活けるだけでも十分美しいのです!だからパリのフルリストにインタヴューすると「オルタンシア(紫陽花)が好き」と答える人が多いとのこと。
紫陽花の色
紫陽花も土壌の酸度によって色が変わります。酸性が強ければ青色に発色し、
中性〜アルカリ性だとピンク色が強くなります。
ただ、日本古来の紫陽花の色は青、だそうです。
梅雨時期に咲く色とりどりの紫陽花は、なんといっても憂鬱な雨の時期の気持ちを癒してくれる心のオアシスです。
ぜひ今年は混んでいない時間や日にちを選んでゆっくり紫陽花を楽しみたいですね!