色の歴史 世界編 4では、絶対王権の象徴的なルイ14世や、モード産業を発展させた経緯をみてきました。
ここでは、17世紀のバロック時代の美術や色などのこの時代の文化についてみていきたいと思います。
ルネッサンス期では、神様は信じながらも、レオナル・ド・ダビンチやミケランジェロやラファエロなどのルネッサンス期の画家によって、様々な表現方法が編み出され、画一的な表現から様々なアプローチにより、より実際的で人に共感が持てる表現方法が生み出されます。
また錬金術の研究の結果その過程において様々な色材が発見されます。そして「研究」という姿勢が近代科学の発展につながることになります。また色材としては、大航海時代と重なり、新大陸から新しい色材がもたらされ、これまでなかった色がヨーロッパで使われるようになりました。
*錬金術…化学的な手段を用いて卑金属から貴金属(特に金)を精練しようとする試みのこと。Wikipedeiaより
錬金術によりもたらされた色彩的功績
1.研究により真実を追求しようとする姿勢から自然科学の発展につながる。
2.研究の過程において発見された色材によって絵画表現の幅が広がる。
例:硫黄と水銀から作られるようになった人工のヴァーミリオンは、最も有用な顔料の一つとなります。この顔料は赤鉛やれんがの粉を混ぜたりしていないことを保証するために塊で売られ、使用するときは粉末にしたそうです。
ヴァーミリオンやウルトラマリンブルーは宗教画では欠かせないものでした。聖母マリアを描く時は、最も質の良いウルトラマリンブルーを使い、金とヴァーミリオンの赤は三位一体の崇拝に関連していました。
1.自然科学の発展
17世紀は「バロック時代」は光の時代といわれますが、光学そのものが研究される時代でした。
1676年 物理学者のニュートン(Isaac Newton 1642-1727 )は、光学の実験過程の中で、壁の1点に孔をあけ太陽光線を三角柱のプリズムに投射することで、色彩学上最も画期的な発見スペクトルを発見します。
ニュートンの分光実験によるスペクトルの発見
・実験版に細長い隙間を作り、その隙間から太陽光線(白色光)を通過させる。
・その光線を三角形のプリズムに投射と7色(赤・橙・黄・緑・青・藍・紫)に分散され、その色帯がスクリーンに投影される
・さらにこの色帯を収斂レンズで収斂すると、もとの白色光にもどる。
この実験については、ニュートンはその著書「光学」で示しています。
1.太陽光(白色光)はプリズムで末くとる単色光に分解することが出来る。=白色光は多種の単色光を合成したものである。
2.分解されたスペクトル単色光を再合成させると、もとの白色光に戻る。
3.有彩色は単色光の合成比率を変えることで生じる。
4.単色光の色の違いは、屈折率が異なることによる。
この実験でのニュートンの功績は以下のようにいえます。
1.太陽光線をスペクトルに分解できることを示しました。
2.光に色がついているわけではなく、色の感覚を生ずる能力と性質があるだけで人間の目に入り、初めて色は近くできる(心理的な存在でもある)ことを示しました。
ニュートンは、世界で初めて太陽光をプリズムに通して分光し、スペクトルを発見しました。これはとても画期的なことでした。これにより、人間が色を感じる主要因が「光の刺激」であることを明らかにしたのです。
その他の光学研究
多くの科学者による光学研究をします。光の強さや光の波動の原理、光の反射や屈折、回折の法則など、現代の色彩学に欠かせない、光学の研究がこの時代からスタートします。
ケプラー…ドイツ。近代天文学の先駆者。ケプラーの法則を発見。
スネル…オランダの数学者。光の屈折におけるスネルの法則を発見。測量術にも貢献する。
ホイヘンス…オランダの物理学者、天文学者。光の波動説を唱え、偏光を発見する。ほかに土星の環や振り子時計の発明などでも知られる。
バロック美術
光への関心は科学者だけではなく、画家たちにも影響を及ぼします。
バロック
ポルトガル語の「Barroco」が由来とされ「歪んだ真珠」という意味です。それは前世紀のルネッサンス時代のような、正円の様に均整がとれて、調和した端正な美術なのに対し、不均整、不調和、装飾過多なこの時代の美術のことを指します。
バロック画家の特徴…キアロスクーロ(光と影)による表現
光と影の陰影の対照を描いたことが特徴で、明らかに光源の存在が認められるような表現をしています。これは物語性や精神的な意味を高めるために追求したもので、彼らは人物に強烈なスポットライトを当てると同時に、深い影によって対象に立体感を与え、その輪郭の一部が闇の中に飲み込まれてしまうような表現を用います。
キアロスクーロは、レオナルド・ダ・ヴィンチが開拓した方法ですが、レオナルドはおもに形の肉付けのためにこの手法を用いたのですが、バロック画家は明らかにスポットライトをあてるようなハリウッド映画の照明効果のような表現になっています。
①カラヴァッジョ
暗い室内に強い光を照射して人物を浮き上がらせる明暗法を確立。大胆かつ繊細な色彩感覚、肉体の存在感があふれ身振り豊かな人物描写が特徴。
②ルーベンス
彫塑性の高い人体が絡み合い、強い明暗対比を用いて描写する手法。暖色系の色調と闊達な筆致が特徴。
③レンブラント
カラヴァッジョの流れをくむ明暗法で表現。薄暗い光の中に描き出す人間の内面を追求。
④フェルメール
静謐で写実的な迫真性のある画面と、綿密な空間構成。巧みな光と質感の表現で風俗画の新しい境地を開く。
⑤ジョルジュド・ラ・トゥール
光と闇の対比。静けさと深い精神性や近代的な造形性を描く。抽象的で単純化された画面が特徴。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
17世紀から本格的に「色」のもとである光についての研究がスタートします。特に、ニュートンのスペクトルの発見をきっかけに、18世紀以降、色光の混色が試みられるようになり、混色の結果から補色関係が知られるようになっていきます。