私たちは色を見ると、その色についての様々な印象やイメージを持ちます。
その色からの受けるメッセージには、様々な背景がもとになって、私たちの色に対する感じ方をつくっています。
例えば、赤は情熱的、青は涼しさやクールなどは、炎の赤→熱い→情熱的、水の青→冷たい→クールや涼しい、という連想がもととなり、炎や水といった、世界共通の物質に対するものなので、どこの国の人でも共通のイメージがわきますが、文化によって印象やイメージが違うというものもあります。
例えば、太陽については、日本は赤ですが、ほかの多くの国は黄色のイメージをもっています。
このように色がもたらす印象やイメージというものは、様々な背景がもとになってそのメッセージを私たちに伝えてくれます。
その中で注目されているのが、私たち人間の体の機能として色を見ることで受ける生理的な反応によってもたらされるイメージがあることがわかってきています。
例えば戦隊シリーズなどで、そのキャラクターを色で表していることが多いですよね。赤は積極的なリーダータイプ、青は慎重な理論派タイプ、黄色は朗らかな明るいキャラ、緑は癒し系でみんなの調整役、そしてピンクは女性戦士…。
このように特に言葉で説明しなくても、その色でメンバーたちの個性や性格、キャラとしての役回りなどが説明できているのは、色がもたらす人間の生理的反応によるものとして、見る側が共感できるからなんです。
ここでは、そんな色による生理的なメッセージについてみていきたいと思います。
色がもたらす生理的な反応
色とは何か
そもそも私たちは物の色を見るとき、光がものにあたり、その反射した電磁波を私たちの眼が捉え、網膜で電気信号に変換され、その電磁波ごとによる色の情報が脳に送られます。
つまり、色というのは電磁波の一種なのです。
電磁波というのは、私たちが普段使っている、携帯電話やテレビなども電磁を利用したものですし、また紫外線や赤外線といったものも電磁波。つまり、見えない電磁波もありますが、私たちが色として認識できる電磁波の範囲を可視光線といいます。
可視光線というのは人間の眼で色と感じることが出来る波長の範囲ですが、この波長の山から山、谷から谷の長さで色が変わります。
波長は、nm(ナノメートル)という単位を使って表しますが、波長の幅が短い方から青紫、青と色みが変わり、中ぐらいの幅は黄色や緑、波長の幅が長くなると橙や赤と虹の様に変化をしていきます。
紫外線や赤外線は見ることができませんが、存在していますよね!
こうして私たちの眼に入ったその色の電磁波が視床下部や下垂体、松果体などに伝えられ刺激します。すると、色の各波長ごとによる脳内物質が分泌されることがわかってきています。
こちらは、南雲治嘉氏がまとめている、「先端色彩による配色トレーニングテキスト デジタル色彩マスター」で記されています。
色とホルモン
色が脳にもたらす刺激について、各種ホルモンが分泌されている。こうした研究は世界中の大学の研究室で個々に研究され、論文が発表されてきた。
そして、その本では下記のように色が脳の及ぼす影響として表でまとめています。
人間の脳の中には、数百億もの神経細胞が存在し、それらは相互に複雑なネットワークを形成しています。
この脳の神経系は、電気の配線のように、すべてつながったイメージがありますが、実はそうではなく、神経細胞と神経細胞の接合部分にシナプスと呼ばれるわずかな隙間があり、シナプス前膜からは「神経伝達物質」が分泌され、シナプス後膜には、その神経伝達物質を受け取る「受容体」があり、神経伝達物質が受容体と結合することで刺激が伝達されます。
そして、この神経伝達物質は非常に多く50以上も存在しているといわれていますが、特にここに書かれてあるアドレナリンやセロトニンなどは、人のモチベーションや働き方などの気持ちや意識に大きくかかわる物質といわれています。
それぞれの働きについて
「アドレナリンが出る」という言葉があるように、「アドレナリン」は比較的多くの人が知っている言葉です。皆さんは「アドレナリンが出る」というと、どのようなイメージをもちますか?
何かに集中している時、何かにチャレンジしている時などのイメージや、またよくアスリートが試合の時、「ゾーンに入っている」という言葉を使うことがありますが、世界記録を塗り替えるようなトップアスリートが試合で集中するとき、実はこのアドレナリンが出ることで、集中力を高め身体機能をアップすることで、記録を塗り替えることが出来る力が出るようになります。
そして、上の表で示したように、アドレナリンであれば赤を見ることでその効果を期待することが出来るのです。
事実、私が以前講座を行った時、ある生徒さんから「今度大切な試験があるんです…」と話しかけてくれてその試験への意気込みを語ってくれたのですが、その時その人が着ていたのは…やはり赤のセーターでした。もちろん、その人は赤とアドレナリンの関係について知らなかったと思いますが、何かに集中したいときは赤を着たくなる、ということはよくある話で、赤とアドレナリンとの関係を知らずとも、そうした色と伝達物質との関係は、私たちもなんとなく生理的にわかっているところがあるのではないかと思います。
しかし、なんとなくではなく、きちんとそれぞれの伝達物質の特徴や役割と、またそれに関わる色についてを理解し、その効果を狙って色を使用することで、その伝達物質の特徴が発揮されやすい状況を作り出しやすくなる、ということになるかと思います。
ただ、もちろん色は薬ではないので、飛躍的にその効果が期待できるというものではなく、あくまでもその状況に持っていくためのサポートができる、ということですがそれでも意識してその状況に合わせた伝達物質を出しやすくすることで、自分の気持ちを意識的に自分が求める目的の方向にもっていくことができ、生活や仕事の中でその効果が期待できることもあるのではないかと思います。
ただし、この伝達物質の分泌についてとても大切なことがあります。それはバランスです。
どれか一つが過剰に分泌しすぎると脳がうまく働かなくなる、といわれています。それは例えば、試験の時、特に赤を意識していた人は、試験が終わったら、ストレス解消の癒し物質のアセチルコリンに関わる「緑」を意識してみるようにする、などが具体例になります。
そうしたことをご理解いただき、適色(材)適所のイメージで参考にしてみてください。
赤をみてアドレナリンを促し「興奮」や「怒り」でパフォーマンスを上げる
「火事場の馬鹿力」という言葉があります。これは、普段なら持てるはずもないような大きなものを、火事になったときは背負って逃げられる、というものですが、この馬鹿力の原動力がアドレナリンです。
アドレナリンは恐怖や不安を感じた時、交感神経から指令を受けて副腎髄質から分泌され「闘争」と「逃走」を助けるホルモンといわれています。そしてアドレナリンの分泌は、脈を早め血圧を上昇させるため、赤を見ると熱く感じたり、興奮するのはその効果が大きいと考えられます。
よくお店でおなじみのセールの看板は赤を使いますよね。この赤いセールの看板を見ると闘争本能に火が付く人、多いのではないでしょうか…
アドレナリンの受容体は全身の臓器に分布してますが、特に「心筋」「平滑筋」などの筋肉に多いためアドレナリンは心臓や筋肉を中心に活躍します。そのため、アドレナリンが血中に放出されると心拍数や血圧が高まり、筋肉に血液が行きわたり、注意力や集中力を高め身体と脳を「臨戦態勢」になります。
またアドレナリンは「記憶の定着」などにも深く関係しているので、試験勉強などで集中して勉強したいときに赤い服を着るというのは理に適ったもの、といえるでしょう。
よくスポーツ選手が試合前にシャウティングしたり、雄たけびを上げたりしますが、このように大声を出して叫ぶことで脳に刺激が与えられアドレナリンを分泌させることが出来るそうです
時として「怒ること」もパフォーマンスを上げる効果がある
アドレナリンは「怒り」によっても分泌が促されます。例えば、仕事や勉強などでライバルに負けて、「悔しい怒り」となった…そんな時もアドレナリンが分泌されます。しかし、そんな時こそチャンスととらえ、自ら「怒りの状態」に追い込み、意識的にアドレナリンを出すことで自分を奮い立たせると、より高いパフォーマンスができるきっかけになることもあります。
面接時の心臓ドキドキは成功の兆候
面接やプレゼンテーションの時、緊張すると心臓が口から飛び出るのではないか…と思うほどドキドキすることありますよね。そんな時、失敗するかも…と思うと本当に失敗してしまいます。
そんな時こそ大切なのは、気持ちをコントロールできるようにすること。このドキドキの原因もアドレナリンです。つまり、自分で無意識ながらもアドレナリンを出している、そのことに気づき、「アドレナリンが出ているから、普通以上のパフォーマンスができるはず」と思えれば、それこそ「ゾーンに入る」ことができるでしょう。脳は成功するためにアドレナリンを出してサポートしてくれているわけですから、自分の気持ちもポジティブに捉えると最高のパフォーマンスができるはずです。
幸福物質エンドルフィンの効果で、黄色から幸せを感じる
昔「幸せの黄色いハンカチ」というタイトルの映画がありました。このように昔から「黄色」というのは幸福感を表す色といわれていますが、黄色は実は幸福感をもたらすエンドルフィンと関わりを持つ色です。実際にアメリカでは、戦争からの無事の帰還を祈る「幸せの黄色いリボン」は有名な話です。
そして黄色に関係するエンドルフィンは幸福物質といわれています。
ランナーズハイをもたらすエンドルフィン
「ランナーズハイ」という言葉がありますが、これはマラソンなどの長時間のランニングなど「極限状態」の時に経験する陶酔状態をさします。
それこそマラソンは非常に苦しく長距離を走っていると、ある時を境に苦しいはずの身体が軽くなり、気分が爽快になり、さらに気分が高揚しやがれ強烈な幸福感に包まれる…これがランナーズハイになります。
この「極限状態の幸福感」これをもたらすのがエンドルフィン効果です。この幸福感によって苦しさが軽減され、逆に多幸感が生じます。
このように「痛み」や「苦しさ」を「幸福」に転換し、ストレスから心と体を守ってくれる物質がエンドルフィン。そのためこのエンドルフィンは「脳内麻薬」といわれたりします。
格闘選手が猛打を受けて顔がはれ上がってもファイトが続けられるのも、このエンドルフィンのおかげといわれています。
極限状態以外でエンドルフィンが分泌されるとき
瞑想や座禅をするとエンドルフィンが出るといわれています。この時アルファ波が出ている状況だそうです。そのように、心が静かに落ち着いた状況でも集中力や注意力が高まり、意識が研ぎ澄まされた状況になります。
また、ヨガや目を閉じてリラックスする、美しいものを見て心を落ち着かせる、アロマなどで良い香りをかぐ…そんな「癒しの時間」を持つことでアルファ波がでやすくなり、エンドルフィンが分泌されやすくなります。
このように1日の中でオンの時とオフの時(リラックス時間)を持つことで、次の日のパフォーマンスをアップする効果が期待できます。
太陽の光をイメージさせる黄色
太陽の色は、日本以外のほとんどの国は黄色で表します。光から幸福や希望をイメージするということもありますが、実際に黄色を見たり、黄色の光に包まれているイメージをすると、エンドルフィンという幸福物質が分泌され、自分が光に守られているような満足感や幸福感を感じることができるでしょう。
免疫力を高めるエンドルフィン
エンドルフィンは免疫力を高め、身体の修復力を高める効果があるといわれています。そして癌と闘う免疫機能を担う「NK活性」を高める作用があり抗がん作用も確認されています。
笑うと病気をしない、という話がありますが、笑うことで「NK細胞」が活性化されるそうです。黄色を見て朗らかな気分になることで免疫機能を高めてくれると嬉しいですね
「ありがとう」はなぜ最強の開運言葉なのか
感謝することが大切というのはよく聞きますよね。成功者は必ずといっていいほど、「感謝する気持ちが強い人」といわれます。実はこの感謝する気持ちがエンドルフィンと関係しています。人に感謝したり感謝されたりするとエンドルフィンが分泌されるといわれています。
人に感謝する、また感謝される、そうすると「エンドルフィン」が分泌され、それこそ元気で生き生きと人生を歩むことが出来るんですね…。
「癒しの色」緑を見てアセチルコリンを分泌させ、発想力を高める
人は緑を見て安心感を覚えます。それには遠い昔の氷河期の時代から、緑があふれる時代に変わり、食べ物を摂りやすく生きやすい時代になったという太古の記憶によるものから、ともいわれています。
そしてこの緑のイメージを使っている例に、非常口への案内の看板があります。
このように「緑を見るとほっと安らぐ」というイメージの色になりますが、その緑を見ると分泌されるアセチルコリンは副交感神経としての機能をもち、いわばブレーキの役割を果たしています。交感神経が興奮するとアドレナリンが分泌されます。それは例えるなら、車でアクセルを踏んだ状況になるのに対して、アセチルコリンはブレーキで制御する役割といえます。
精神的にリラックスした状態では「アルファ波」が出ることは知られていますが、「シータ波」というのもあります。
シータ波はアルファ波よりさらにゆっくりした波で、まさに睡眠に入るときの「うとうとした状態」や深い瞑想状態で発生する脳波。このシータ波がアセチルコリンと深くかかわっているといわれています。それはアセチルコリンが活性化するとシータ波が生み出しやすくなり、シナプスもつながりやすくなるからといわれています。
シナプスがつながりやすくなると、記憶が定着しやすくなるといわれています。そして記憶力が上がると発想力がアップするのでいろいろなアイデアが生み出されやすくなります。
認知機能を高めるアセチルコリン
よく、好奇心旺盛で新しいことにチャレンジする人というのは、年を取っていてもとても若々しい印象を人に与えることが多いですが、それは常に好奇心をもって新しいことにチャレンジしているとシータ波が出やすくなり、アセチルコリンが分泌され脳が若々しい状態になり「認知機能」が高まるからといわれています。
いつも同じ行動パターンではなく、新しい場所に行ったり、これまでと違った新しい体験を多くすることでアセチルコリンが分泌されシータ波が出やすくなるそうですよ!
森林浴でひらめき力をアップする
森林浴などをしたり、緑に包まれているイメージを持つと、新しい発想やひらめきが生まれることがありますが、まさにこのアセチルコリンが分泌されているから。
また森林浴をすると癒されるのは、そもそも樹木には自己保存のため、害虫を防御してほかの植物の生長を阻む「フィトンチッド」という揮発性物質を発散しています。そしてこの「フィトンチッド」が人間の血液中のストレスホルモンの濃度の抑制や血圧や脈拍の乱れの抑制、抗菌作用があることが実証されています。つまり本当に癒されているということなんですね。
そうした癒された空間の中でぼーっとしている時こそアセチルコリンが分泌され、良いアイデアが浮かんでくるということになります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
このように脳内物質の特徴とそれにまつわる色とのかかわりが整理できると、様々な場面で応用できます。
さらに青や紫、ピンクといった色については「カラーコーディネート 色と脳内物質の関係を理解して仕事や生活に活かす 2」でご案内したいと思いますので参考にしてみてください。