日本の食文化の考え方と世界への影響
和食はユネスコ(国連教育科学文化機関)において2013年12月4日に「食文化が自然を尊重する日本人の心を表現したもので、伝統的な社会慣習として世代を超えて受け継がれている」と評価され無形文化遺産に登録されました。
そうしたこともあり日本食が注目され、海外でも日本食のレストランが急増しています。
また、120年の歴史を誇り、ピブグルマン(価格以上の満足感が得られる料理)から三ツ星(そのために旅行する価値のある卓越した料理)までの評価で知られる「ミシュランガイド」、とくに2007年にアジアで初となる「ミシュランガイド 東京」が創刊され、東京は今や世界で最も星付き店が多い街となりました。
こうした日本食への評価の1つには「盛り付けの美しさ」とともに世界的な「健康志向」への関心から、日本食の「栄養バランスに優れた健康的な食生活」があげられます。
そして、日本食は「目で楽しむ」という考え方があり、それには色による食文化の考え方があります。
日本の食文化の特徴
日本の食文化には以下の点が特徴として挙げられます。
四季の変化を楽しむ
日本には四季があり、その季節ごとの食材を楽しむ文化があります。特に自然の移ろいを楽しみ「旬」の色や素材を大切にしてきた日本人は、食の中にも「季節感」を取り入れ、素材や盛り付けなど五感で味わうことを伝統的にしてきました。
旬の素材を生かす
和食は、ソースなどを使わず、素材そのものを活かすのが特徴です。味と合わせ、風味や触感、香などそうした素材を引き立てる技と合わせ、四季を感じさせる器やお盆や箸置きといった独特なテーブルウエアがあり、そうした季節感を感じる演出を楽しみます。
素材を生かした「だし」の文化
平安時代の贅沢な貴族文化を戒めとした鎌倉時代は質素を良しとする文化でした。禅宗の僧侶らが伝えた精進料理の材料は、野菜や海藻、豆類などの「植物性の食材」を中心にしているため、淡白な味に深みを出すため、昆布や干した魚類から「だし」をとり、日本食ならではの特徴「うま味」を加えることで、素材を生かして美味しく食べる工夫を伝統的に行いました。
陰陽五行説に見る食のバランスの考え方
陰陽五行説による考え方は、もともとは中国古来の自然の摂理にのっとった考え方をベースにしたもので、古来から日本の国家としての成立の際にも様々なことにおいてこの考え方を導入してきました。そして食においてもこの5色の食品群をバランスよく食べることで心身の健康を管理し、健康で心豊かに生活をすることを目標にしています。
東洋医学にもある「医食同源」の言葉が示すように東洋医学では食がとても大切なポイントです。
よく「病は気から」という言葉があるように「気」は私たち人間の肉体や精神を動かしていく命のエネルギー源。食のバランスが崩れると「気」が弱くなり、そこから病が生まれるという考え方です
そのため、東洋医学の思想においてもバランスよく食べるということが私たちの健康に、また精神に、とても大切になります。
陰陽五行思想(いんようごぎょうしそう)
中国の春秋戦国時代ごろに発生した「陰陽説」と「五行説」が結合したもので、「陰陽思想」と「五行思想」との組み合わせでより複雑な事象の説明がなされるようになったものです。
【陰陽説】
陰陽説は、すべての事柄は、陰と陽からなりそれらがお互いに影響しながら補いあい、調和しあって万物を生成し、発展していくという考え方です。
陰陽は、例えば天と地、火と水、男と女、動と静、昼と夜、太陽と月、表と裏など様々なものがあります。
そして、この相反するものはそれぞれが独立して存在しているのではなく陰陽がお互いに依存しあって存在していて片方があるからもう片方も成り立つ、という考え方です。
【五行説】
古代 中国 に端を発する 自然哲学 の思想で、万物は 木 ・ 火 ・ 土 ・ 金 ・ 水(もっかどごんすいと読みます)の5種類の元素からなるという説です。
この5種類の元素は「互いに影響を与え合い、その生滅盛衰によって天地万物が変化し、循環する」という考えが根底にあります。
【五行の相生(そうしょう】
木は燃えて火を生み(木生火)
火は燃えて土になり(火生土)
土はその中から金を生み(土生金)
金は冷えると水を生む(金生水)
そしてその水は木を育てる(水生木)…
五行が循環していきます…いわゆる「五行の相生(そうしょう)」の関係はこのようになっています。
そしてこの陰陽五行を食に活かした考え方があります。
基本的には「5色をバランスよくとりましょう!」という考え方なのですが、どんなに体に良いからといっても1つの色の食べ物だけを過剰に取りすぎると、「過ぎたるは及ばざるが如し、、」となったり、逆に足らなさすぎるとバランスが崩れ身体に変調をきたすことになります。
五色の食材の特徴について
青の働き 感情をコントロールし正常なリズムを保つ
青の食品 野菜全般
青の食材の特徴 身体の正常なリズムを保ち感情をコントロールして安定させるのが青の食材の主な役割。
青の臓器は肝臓。肝臓は血液の倉庫なので青のバランスが悪くなると血液の流れが悪くなる。そのため足らないと、体調を崩しやすく
情緒が安定しなくなるなど感情面の問題が起きやすくなります。
青の色の臓器 胆のうは肝臓で作られた胆汁をため、脂肪の消化酵素を助ける働きがあるので肝臓とセットで消化系の働きをしますが、胆のうを元気に
するには野菜(特に苦い野菜)が効果的といわれています。
赤の働き
赤のモノは考えるためのベースを作り精神的なエネルギーを生み出します。
赤の食品
果物(トマトやキュウリは植物学的には果物です)や菓子類
赤の食材の働き
赤の食材には創造性や集中力を高める働きがあり、頭脳労働などの仕事をしていると果物や菓子類などが食べたくなります。夢や希望、好奇心などをはぐくむのも特徴で、何か学んだり新しい分野に挑戦するモチベーションもこの色の食材から生まれます。
そう…脳のエネルギーは糖分だけですよね…。
赤の色の臓器
赤の臓器である小腸は食べ物を消化吸収する働きがあり果物などの食物繊維はその働きを助けてくれます。また赤の食べ物は心に関わるので、赤の食材のバランスがとれていれば精神的な豊かさや気持ちの余裕が生まれます。
ただし、5色の中では一番過食しやすく赤が過剰になるとわがままになったり集中力がなくなることがあるのでやはりバランス!が大切です。
黄色の働き
コミュニケーション能力や自分自身をアピールする力を高め、人を引き付ける魅力を生み出します。
黄色の食べ物
炭水化物系(麺類や穀物、米類)、豆類いも類、乳製品(牛乳やチーズ、ヨーグルトなど)
黄色の食材の働き
黄色の食材は青や赤、白、黒の4色を燃焼させ、身体を動かすエネルギーに変える重要な色。
黄色の臓器
胃腸と脾臓 黄色の食材のバランスが悪くなると消化機能が低下し、自分の「気」を十分に発揮できなくなります。
胃腸が弱ったときは、おかゆやうどんやそうめん、またかぼちゃなどの食物繊維の少ないもの…要は、消化しやすく、胃酸を過剰に分泌させないものがよいのはなんとなくわかりますよね
そして脾臓は免疫力を高めてくれる臓器。穀類の自然な甘みで脾臓を養い、身体を冷やさないようにすることで免疫力を高めることが出来ます。
黄色の食材が足らないとコミュニケーション不足に陥り、仕事でも恋愛でもコミュニ―ションでトラブルが発生しやすくなり、心配事や悩み事が尽きない!なんてことになるかもしれませんね…。
白の働き
決断力や行動力を高める色です。
白の食べ物
白く辛みのある食べ物とあわせ、東洋医学では肉類も白になります。白は行動力や決断力、攻撃力闘争心を高め意識の働きを活発にします。
試合前や試験面接などで白の食材を食べるとパワーが出ます。試験前にお肉を食べることで活力をだすということありますよね
白の臓器
肺と大腸肺に良いといわれる食べ物は大根、白菜、長ネギ、レンコン、山芋、かぶ、鶏肉、白身魚等があります。また、肺は乾燥を嫌い、潤いを喜ぶ、という性質があるとされ、乾いた空気を直接受け止めるパーツなので肺に通じる器官の鼻や喉などの不調を招かないためには身体を中から潤す、特に、肺を潤すことがとても大切になるとか…。また肺を元気にして、呼吸状態を良好に保つにはタンパク質やビタミンなどの栄養素の補充が欠かせません。
食べ物を食べると体の中で二酸化炭素が作られますが、体内の二酸化炭素が多くなるとそれを外に出す呼吸の役割がとても多くなります。排出される二酸化炭素の量が一番少ないのが少ないのが脂質、タンパク質といわれていて、呼吸器の負担を軽減するには脂質やタンパク質をバランスよくとることがとても大切といわれています。
また大腸を元気にする食べ物には繊維質の多い白の食べ物のレンコンやダイコンオリゴ糖を含む玉ねぎなど…が効果的です。
腸活することで、血液がサラサラになり、お肌につやが出て病気になりづらくスリムな体を手に入れることができますよ!
しかし、食べ過ぎると攻撃性や闘争心が過剰になるため、人間関係にひびが入りトラブルメーカーとして孤立することもあるかもしれません。また、白の食材は、五感の働きを活性化するため、逆に、白を過剰に取りすぎると五感が鋭敏になりすぎて神経質になり、些細なことで切れやすくなることがあるといわれています。
黒の働き
生命維持と精神の活動を支える働きがあります。また黒は知性や智慧、品性を司る色で、知識を吸収したり、学んだりする能力に深くかかわります。
黒の食べ物
海藻、きくらげ、魚介類
さかな、さかな、さかな~さかなを食べると~あたま、あたま、あたま~頭がよくなる~って歌ありましたよね!
黒の臓器
腎臓と膀胱…東洋医学で腎臓は「精の蔵」と呼ばれ生命の根源の気と血の精製と管理をするところで、実際に腎臓は赤血球を調整する働きがあるので、赤血球が減少すると貧血になります。
また、体をあたためる効果のある食材は、腎臓に良い食材を食べるのが効果的で、黒い食材の例としては、黒キクラゲやシイタケ、ゴボウ、海藻類これらの黒の食材は腎のエネルギーを補充してくれます。そして、アズキは利尿作用が強く、腎臓の負担を軽減してくれます。
腎臓の弱い人は血液をろ過する力が弱く、血液が汚れがちです。黒豆やアズキ、ピーナッツなどの皮には、瘀血(滞って汚れた血液)を改善する作用があるといわれています。
黒は「精力」を生み出し、私たちの生命力を強くする力があります。「健全な精神は健康な肉体に宿る」といわれますが、私たちの肉体に十分な生命エネルギーが供給されないと気力が足らず十分な活動が出来ません。
ただ黒が多くとりすぎると高慢になり威圧的になる可能性があります。他人を見下したり、自分の考えが最も優れていると感じていたり猜疑心も強くなり他人を信用できなくなったりした場合黒の食品が過剰に取りすぎていないか他の色の食品のバランスなどを考えてみると良いかもしれません。
まとめ
いかがでしたでしょうか…。
まぁ…言ってしまえば「ばっかり食べ」のように同じものしか食べない、、など偏った食べ方ではなくバランスよく食べることが大切ということですね。
そして、東洋医学での色の区分けは、食材そのものの色ではないのですが、分類としての色の食材を理解していただくと、複雑なカロリー計算などしなくても、ぱっと献立の色をみて、バランスをとることが出来るので、とても分かりやすいと思います。
また和食の良さには自然の美しさや四季の移ろいを表現するなどの季節感を楽しむことや
年中行事と食とのかかわりの中で自然の恵みとして「食」を楽しみ家族や地域の絆を深めることができる…。
特に行事に関わる食材は、日々の健康や幸せを願って考え抜かれた食材です。日本人ならではの「食の豊かさ」を感謝して頂きたいですね